都岳連自然保護委員会: 2008年5月アーカイブ
地球温暖化問題を主なテーマとして、本年7月7日「2008北海道洞爺湖サミット」が開催された。約1000年から2000年前の中世期、地球の気温は、温暖期や小氷期等の変動を繰り返しながら比較的安定していたが、西暦1750年頃から、人間による化石燃料の使用によって平均気温が上昇し始めた。化石燃料に含まれる二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスの放出が急速な地球温暖化の大きな要因とされている。このままでは、西暦2100年までの間に、平均気温が最大6.4℃上昇すると言われている。これは過去1万年の気温再現結果に照らして上昇の速度が明らかに異常である。今後20~30年の間に「京都議定書」「洞爺湖サミット」「09デンマーク会議」等でドラスティックな温暖化抑止対策を講じておかなければ、地球は取り返しのつかない事態に陥るだろう。
さて、2007年6月23日、中央高速と関越道間の圏央道が開通した。高尾山を隧道でぶち抜き、圏央道高尾トンネルの掘削工事が2009年度貫通を目指し現在着々と進行している。圏央道は、神奈川県横須賀市から高尾山を通り、埼玉県、茨城県を抜け、千葉県木更津市を結ぶ首都圏中央連絡自動車道路である。高尾山は東京都心から50キロ、電車で1時間足らずで、家族連れや若者達、中高年とあらゆる階層の人々に愛され、年間250万人が訪れるという。東京を訪れる外国人観光客の人気は、浅草、秋葉原に次いで高尾山だそうだ。最近、フランスのタイヤメーカー「ミシュラン」が、高尾山を三ツ星にランクしたほどだ。
近郊に緑豊かな憩いの場を持つことが近代的な大都市の条件なら、高尾山はその役割を十分に果している。南斜面が温暖帯、北斜面は冷温帯であるため、約1300種の植物、5500種の昆虫類、130種の野鳥、30種の哺乳動物が棲息しているという。貴重な自然の宝庫であり、見事な食物連鎖のシステムが構築されている。トンネルによって水脈が分断され、生命の根源である水がむやみに放出され、滝が涸れ、高尾山の豊かな自然に多大な悪影響を及ぼすことが懸念される。
宇宙の出現は137億年前、地球が46億年前、生命の誕生が40億年前、そして人類が現れたのが600万年前とは、元自然保護委員長・藤井謙昌が唱えるところである。想像も出来ない驚くべき時間をかけて形成された地球の歴史を考えるならば、我々人間は、地球に対してもっと謙虚にならなければならないだろう。産業革命後僅か260年で、人類は鉄とコンクリートにより自然界の循環サイクルを断ち切り、生態系破壊を始めた。今さら260年前の社会に戻ることは不可能であるが、これからは便利さばかり求めることにブレーキをかけて行かねばならない。
1972年6月5日、スウェーデンの首都ストックホルムで国連人間環境会議が開催された。以来、6月5日が「世界環境デー」となった。我々は毎年6月初旬の日曜日、新聞等で参加者を募集して高尾山清掃キャンペーンを実施している。同年尾瀬で始まったゴミ箱撤去運動以来、高尾山にもゴミは殆ど見当たらなくなった。20年余も続けてきたことが世間の風潮と相まって漸く効果が出てきたものと認識している。継続は力なりだ。
時代は今、将に環境の世紀、自然保護という傲慢な考えを捨て、人類は動植物と平等に地球の恩恵を享受するという思考へと展開して行かなければならないと考えている。
自然保護指導員 徳永 邦光
(都岳連通信第4号 巻頭言より)
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